1级读解练习2
実践練習・2
次の文章を読んで,後の問に答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
どこの家でもそうだと思うが、母親というのはやけに物持ちがよくて、ときどきあっと驚かされることがある。二十年も前のカーデイガンを今でも着ていたり、三十年も前に使っていたカーテンを未だに押入の奥にしまっていたり・・・・・・中でも自分の子供に関係する類のものは、今や何の役にもたたないと分かっていながら、(注1)後生大事にとってある。
むろん、①ぼくの母親も例外ではない。つい先日も、押し入れの奥から②驚くべきものを出してきて、ぼくをあっと言わせた。そのときぼくは母親と差し向かいで、お茶を飲みながら昔の話しに花を咲かせていた。大学時代のぼくが、③海のものとも山のものともつかないのに。いつもシコシコ原稿を書いていたという話題になったとき、母親は急に何か思いついたような顔をして、「そういえばあなたの・・・・・・あれは何、カードみたいなものが一杯あるけど」てなことを言った。何のカードなのかぼく自身にも全然わからなかったので、ちょっと見せてくれと頼んだところ、押入れの奥からに風呂敷に包んだ五百枚近いカードを出してきたのである。
一目見て、ぼくはそれが何であるのかを思い出し、声を上げそうなほど驚いた。それはぼくが十九歳から二十歳にかけての約一年半、勉強のつもりで記していた日記のようなカードである。(注2)俗に“京大式カード”と呼ばれるもので、裏は真っ白、表には何本かの罫線読書カードが引いてあるだけのシンプルなカードである。当時のぼくはこれを使って、まず個人的な読書カードを作り始めた。短篇小説を一篇読んでは、一枚の京大式カードに読後感を記していたのである。半年もしない内にカードはかなりの枚数になり、段段面白くなってきたので、今度は自分なりの小説論とか、自分の書いている小説の欠点、あるいは(注3)徒然に思うことなどをここに記すようになった。
十数年を経た今、このカードを改めて読んでみると、その勤勉さ、④その暗い情熱には頭の下がるものがある。二十歳のぼくが本当に心から、何が何でも小説家になりたいと願っていたことが、よく分かる。(中略)
ぼくは、⑤二十歳の原点に還るべく、再び京大式カードをつけてみようかと考えている。
注1 後生大事: 大事にすること
注2 俗に: 一般に
注3 徒然に: 自分の思うままに
問1①「ぼくの母親も例外ではない」とはここではどのようなことか。
1)ぼくの母も物持ちがよいこと
2)ぼくの母親も押入れの奥から驚くべきものを出してくること
3)ぼくの母親もよく人を驚かすということ
4)ぼくの母親もよく昔の話しに花を咲かせること
問2②「驚くべきものを出してきて」とあるが、それは何のことか。
1)筆者の書いた原稿
2)筆者の書いたカード
3)筆者の書いた日記帳
4)筆者の書いた小説
問3③「海外のものとも山のものともつかない」とはここではどのようなことか。
1)筆者が、小説家になるかどうかわからないということ
2)筆者が、休みなのにどこにも遊びに行かないと言うこと
3)その原稿が、売れるかどうかもわからないということ
4)筆者が、小説家になる才能があまりないこと
問4④「その暗い情熱」とあるが、何に対する情熱か。
1)読書カードを作ることに対する情熱
2)小説を読むことに対する情熱
3)まじめに勉強することに対する情熱
4)小説家になることに対する情熱
問5⑤「二十歳の原点に還る」とはここではどういうことか。
1)京大式カードに、小説の読後感を書くこと
2)小説をたくさん書くこと
3)目的に向かって勤勉に情熱を注ぐこと
4)若さを失わないように努力すること
実践練習4
次の文章を呼んで、後の問に答えなさい。答えは、1,2,3、4,から最も適当なものを一つ選びなさい。
「昨夜、悪魔がやってきました」と、患者は医者にいった。「癌で死にかけているわたしに,地獄へ落ちてもいいのなら,もっと生き続けさせてやるという取引を申し出たのです。もちろん,わたしは喜んでこの①申し出を受けましたよ。わたしはまだ生き続けなきゃならなんのです。仕事がありますのでね」そこは癌研究所の患者病棟の一室だった。
医者は,この患者の言葉に,あまり驚かなかった。死期の追った患者の妄想だろうと判断したのである。何しろこの患者は,ただ胃癌であるというだけではなくその癌が食道や肝臓へも移っていて,②死ぬのは時間の問題だと思われていたからである。
ところがそれから一ヶ月が経ち,二ヶ月経っても,患者は死ななかった。それどころではない。入院当初は半死半生だったこの患者はますます血色がよくなり,元気になってきたのだ。しかも癌はどんどん彼の全身に広がり,彼の内臓の器官すべてに移り,今や人間のからだの中に癌があるというよりは,癌が人間の形をしていると言った方が早いと言うような状態になった。医者は診断のしようがなく、これにはただ、あきれるばかりだった。
ついに癌が、患者の全身を占領した日,完全に元気を取り戻した患者は、医者に退院の許可を求めた。
「まあ,元気なんだから退院したっていいんですがね」③医者は首をひねりながら答えた。
「しかし不思議だなあ。あなたは本当ならもうとっくに④死んでなきゃ、いけないんですがねえ」
「わたしは、それほど不思議とはおもいませんね」患者は健康そうに朗らかな笑いを見せ、医者にいった。「ほら,昔バンパイヤ(吸血鬼)というのがいたでしょう。あの連中は,⑤血を吸い取られることによって永遠の生命を得たのです。わたしも、全身を癌に犯されたため、完全に癌と一体になり、もしかすると、これで永遠の生命を得たのかもしれないのです」
(注)唖然としている医者にむかって、患者はさらにいった。
「ところで、ながい間病人用の食事だったもので,腹が猛烈に減っています。いかがでしょう。この病院の患者の体内から切除した肉腫を――詰まりその,癌を,少しゆずっていただけないでしょうか」
(注) 唖然としている: あきれているようす
問1①「申し出た」のは誰か。
1)患者 2)医者 3)悪魔 4)わたし
問2 ②「死ぬのは時間の問題」とはここではどのような意味か。
1)何時死ぬかわからない 2)もうすぐ死ぬ
3)死ぬ時間が問題である &n